はじめに
ず、前提として以下の記事をご覧ください。外国株式の配当金における二重課税の説明をしています。
本記事は、一般的な個人投資家向けに記載します。制度の全てを記載すると長くなるためです。サラリーマンで外国証券に投資している人をイメージしています。
今回の記事を書いたきっかけ
「二重課税は確定申告すれば戻ってくる。」という言葉を耳にしたことがあり、”全額”戻ってくると思い込んでいました。「本当に全額戻ってくるのか?」が疑問になり、この記事を書いた次第です。
結論
結論を先に書いてしまいますが、外国税額控除の手続きを行っても、ほとんどの場合、海外で支払った税金は全額は返ってきません。
全額返ってくるのは、簡単に記載すると年収1,000万円以上で控除(住宅ローン減税やふるさと納税など)を使っていない人です。
確定申告をすることでいくら返ってくるか?
e-Taxを利用して、いろいろと数字を入力してみました。
★前提★
単身のサラリーマンで、収入は「会社からの給与」のみ。「外国株式の配当」があったので、確定申告で外国税額控除を利用して二重課税分を取り返そうとしたイメージです。ふるさと納税と言った税金対策はしていません。
ケース① 外国株式の配当金が5万円
ざっくりですが、Appleの株に100万円を投資していて、5万円が配当金として配られたとします。この時、外国で5,000円(5万円の10%)の税金が取られます。
下の表は、5,000円の税金のうち、 外国税額控除でいくら返ってくるかを年収別に記載しています。
年収 | 外国税額控除で返ってくる金額 | 支払った税金のうち返ってくる割合 |
300万円 | 1,600円 | 32% |
400万円 | 1,700円 | 34% |
500万円 | 2,000円 | 40% |
600万円 | 2,400円 | 48% |
700万円 | 3,100円 | 62% |
800万円 | 4,000円 | 80% |
900万円 | 4,800円 | 96% |
1,000万円 | 5,000円 | 100% |
1,100万円 | 5,000円 | 100% |
ケース② 外国株式の配当金が25万円
ざっくりですが、Appleの株に500万円を投資していて、25万円が配当金として配られたとします。この時、外国で25,000円(25万円の10%)の税金が取られます。
下の表は、25,000円の税金のうち、 外国税額控除でいくら返ってくるかを年収別に記載しています。
年収 | 外国税額控除で返ってくる金額 | 支払った税金のうち返ってくる割合 |
300万円 | 10,400円 | 41.6% |
400万円 | 10,500円 | 42% |
500万円 | 11,800円 | 47.2% |
600万円 | 13,400円 | 53.6% |
700万円 | 16,500円 | 66% |
800万円 | 20,500円 | 82% |
900万円 | 24,000円 | 96% |
1,000万円 | 25,000円 | 100% |
1,100万円 | 25,000円 | 100% |
グラフで考察(ケース①②)
ケース①と②をグラフにしてみました。配当金が25万円の方が 支払った税金のうち返ってくる割合が高いですね。なので、配当金が高くなればなるほど、取られた税金が返ってくる割合が大きくなると言えます。
「投資額500万円、配当25万円」って結構大きい数字ですよね。なので、ほぼほぼ年収1,000万円であれば、外国で支払った税金が100%返ってくると考えてよさそうです。
計算式と考え方
国税庁のページに計算式が載っています。詳細の補足文章は割愛します。
よくわかりませんよね。ざっくり以下の内容で考えます。
★ここからが重要★
「納めた税金」の金額が下がれば、もちろん「外国税額控除で返ってくる金額」も下がります。なので、税金の控除を利用している場合、年収1,000万円あっても外国で支払った税金は全額返ってこないことになります。
<税額控除>
納める税金から直接控除される。・・・住宅ローン減税など
<所得控除>
税金を計算するための所得を控除する。・・・生命保険料控除、寄付金控除(ふるさと納税)
ネット上の記事を検索すると、「税額控除が影響する」と書かれていましたが、e-Taxに色んな数字を入れてみたところ、所得控除を利用した場合でも「外国税額控除で返ってくる金額」に影響がでました。
言いたかったこと
外国株式に投資をしていて、二重課税を外国税額控除で取り返そうと言う人は、おそらくふるさと納税をやっていたりと税金の控除を行っていると思います。なので、外国株式の二重課税で取られた税金を全額取り戻すのは非常に難しいと思います。
そうなると、冒頭で紹介した以下の記事になりますが、わざわざ配当金が出る銘柄を選ばず、無配当の銘柄で値上がり益を期待した方がいいと言うことになります。
まとめ
今回の記事では、外国税額控除を利用していくら戻ってくるかを試算しました。どんな人でも100%返ってくるわけではないので、制度を利用しない(そういう収入を発生させない)がよさそうです。
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